旭川地方裁判所 昭和39年(ワ)411号 判決 1965年4月07日
主文
被告は原告に対し、別紙目録記載の土地について旭川地方法務局昭和三八年九月三〇日受付第二三七五二号をもつてなされた根抵当権設定登記及び同日受付第二三七五三号をもつてなされた所有権移転の仮登記の各抹消登記手続をせよ。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は主文と同旨の判決を求め、請求の原因として、「別紙目録記載の土地は原告の所有であるが、右土地につき旭川地方法務局昭和三八年九月三〇日受付第二三七五二号をもつて被告を根抵当権者、原告を債務者、同年同月同日金融取引契約についての根抵当権設定契約を登記原因とし、債権元本極度額金五〇万円とする根抵当権の設定登記、並びに同地方法務局前同日受付第二三七五三号をもつて被告を権利者、同年九月三〇日停止条件付代物弁済契約を登記原因として、前記金融取引による債務金五〇万円を完済しないときは所有権が移転する旨の所有権移転の仮登記がなされている。しかしながら原告は被告との間に右のような根抵当権設定契約並びに停止条件付代物弁済契約をしたことなく従つて又その登記手続をしたこともない。右各登記は、原告不知の間に宮川駒夫が原告の印鑑を盗用しほしいままに原告名義をもつて被告から金員を借受け、本件土地につき被告と根抵当権設定契約並びに停止条件付代物弁済契約をした上、原告名義の登記委任状を偽造してこれを被告に交付したため、右偽造委任状に基いてなされたものであつて、権利の実体に添わない無効の登記である。よつて原告は本訴において被告に対し、右各登記の抹消登記手続をすべきことを求める。」と述べ、被告の抗弁事実を否認した。
証拠(省略)
被告訴訟代理人は請求棄却の判決を求め、答弁として、「原告の主張事実中、本件土地が原告の所有であること、右土地につき原告主張の日時に原告主張の根抵当権設定登記並びに所有権移転の仮登記がなされたことは認めるが、その他の事実は争う。本件根抵当権設定金融取引契約及び停止条件付代物弁済契約並びに前記各登記の申請手続は原告の代理人たる宮川駒夫と被告会社との間で適法になされたものである。仮りに右宮川が右行為について代理権を有しなかつたとしても、原告は昭和三六年三月頃宮川に自己の実印を預けて信用金庫に対する宮川の債務につき保証の趣旨で原告名義の手形を振出す権限及び原告が他から買受けた本件土地につき所有権移転登記手続をする権限を授与し、宮川をしてその頃原告の代理人として右各事務を処理させた事実があるから、本件根抵当権設定金融取引契約及び停止条件付代物弁済契約は宮川がその有していた代理権の範囲を越えてなした行為である。しかして宮川はかつて原告の依頼により原告の家屋を建築し、建築完成後借家人の選定を原告から頼まれて世話してやる等原告の信頼を受けていた者であり、被告会社と前記各契約を締結するにつき代理をなすに際し、かねて原告から預けられていた実印及び本件土地の権利証を持参し、右実印を使用して契約書、登記委任状等を作成したので、被告は当然宮川に正当な代理権限あるものと信じたのであり、かく信ずるについては正当の理由があるから、宮川の締結した本件根抵当権設定金融取引契約及び停止条件付代物弁済契約は表見代理の規定によつて本人たる原告に対し効力がある。」と述べた。
証拠(省略)
別紙
目録
旭川市神居町雨粉九九番の一一五
一、宅地 七〇坪